固定残業代の限界がすぐそこまできている4つの理由
便利なように見えますが、何かと問題が続出している固定残業代。
固定残業代の限界がすぐそこまできています。
固定残業代とはなんでしょうか?
固定残業代とは、ある一定時間分の残業代を固定的に支払う賃金のことで、会社によって固定残業代や定額残業代といいます。
大きく分けて2通りあり、1つ目は基本給の中に含めて支払う方法(基本給組み入れ型)、2つ目は一定額を手当として支払う方法(手当型)。
1つ目、基本給組み入れ型。
これは基本給に残業代を組み入れます。
例えば「基本給40万円」の中に残業代が含まれているとして支給する方法。
2つ目、手当型
これは基本給とは別に「○○手当10万円」として一定額の手当で支給する方法。
固定残業代を導入するには何らかのメリットがあるはずですが、そのメリットとは。
従業員のメリット
・残業をしなくても固定残業代が支払われる
繁忙期と閑散期の差が激しい職種では、毎月の残業時間がバラバラであるため、収入が不安定になりがちだが、固定残業代では、残業が少なかった場合でも一定の固定残業代を受け取れます。また、業務を効率化し、残業時間が短くなっても一定の残業代は支給されます。
会社のメリット
・固定的賃金を多く支払っているように見せられる
一定額の固定的賃金を支給することで従業員に安定感を与えたり、固定的賃金が多く設定でき求人広告の見栄えをよくしたりすることができる。
基本給を高くすると残業代や賞与や退職金にも影響がある(賞与や退職金の支給方法による)ことがあるが、残業代を高くすればそれらには影響を与えることがない。
従業員にも会社にもメリットがありますが、良いことばかりではありません。
当然デメリットもあります。
従業員のデメリット
・固定残業の時間分までは残業を求められることがある。
(固定残業が支給されているから、その時間までは残業命令を拒否しづらい)
会社のデメリット
・固定残業代の残業時間分よりも、実際の残業時間が短くても固定残業代を支給しなければならない。(今月は残業時間が短いから固定残業代を減額する、ということができない)
4~5年くらい前は、固定残業代を推奨する専門家が多かったのですが、ここ1~2年は固定残業代を廃止する流れが強まってます。
会社にとって、固定残業代の効果が薄まって、運用の限界になってます。
なぜ固定残業代の運用の限界なのでしょうか?
4つの理由を考えてみました。
理由1 固定残業を採用している会社で実際に残業時間を集計している会社は少ない
これは私の実感ですが、固定残業代を導入している約8割の会社は労働時間を集計管理してません。
固定残業代を払っているからといって労働時間の管理をしなくて良いわけがありません。
固定残業代を支払っているから無制限に残業させられることはできません。
36協定で定めた時間の範囲以内でしか時間外労働・休日労働ができません。
その協定で定めた時間が短くても、協定の時間を超えたら違法です。逆に、短い時間を定めているとその時間を超えたら違法。
労働時間の長い短いではなく、労使協定に定めた時間を超えたか超えないかが違法合法の境界線。
さらに、働き方改革が始まった2019年4月から労働安全衛生法の改正で、管理職を含めて労働時間の管理が義務化されました。
理由2 固定残業時間を超えて働いても不足分を払ってない
固定残業代を超えて労働した分の残業代を支給しなければなりません。しかし、固定残業代を導入している多くの会社では、労働時間・残業時間・深夜労働・休日労働時間を集計してません。
「定額残業代に収まっているから」ということのようで、実際は支給してないことが目立ちます。
よくあるケースは、「1日で12,000円だから朝から晩まで仕事が終わるまで12,000円だ。早く終われば早く帰っても12,000円、終わらなければ終わるまで12,000円」、と決めたとしても、1日の労働時間が8時間を超えれば残業代が発生するので、12,000円の他に残業代を支払わなければならないのです。しかし実際に不足分を支払われてないことが多いのです。
特にトラックドライバーの未払賃金はこのケースが非常に多かった。
理由3 実態とあってないので廃止することが困難
固定残業導入当時は、それなりの仕事量があり固定残業代に近い残業時間があったが、その後、仕事量が減って残業時間が短くなり、払い過ぎていることが増えてます。
だからといって、固定残業代を廃止すことは困難です。従業員が既得権を主張すると会社はそう簡単に廃止することはできません。
残業時間がないのに残業代を支給するなんて何の意味があるのでしょうか?
残業時間に対応してない残業代は残業代ではありませんよね。
理由4 固定残業時間と残業代の根拠が不明確
そもそも固定残業代を導入する会社は、労働時間集計管理をしてないことが圧倒的多く、区切りの良い給与額を支給するために、例えば基本給20万円、固定残業10万円で合計30万円のように決めているのです。
この時の固定残業代が何時間で10万円なのか、残業代の計算式はどうなっているか従業員に説明できません。十分に説明できないと固定残業代の固定残業ではなくて固定的な手当と捉えられかねません。
そうなると、固定残業代を基本給に加算して、所定労働時間で割って、割増率をかけて、残業代を算出しなければならいこともあり得ます。
想像以上の大きな金額になります。
特に、基本給組み入れ方の固定残業代は、基本給部分が何円で、残業代部分が何時間分で何円かなんて全く不明確。
未払い賃金を請求されたら、会社は何も抵抗できなくなります。
たしかに固定残業代は、人材募集時には見栄えが良くなります。
従業員にとっては、固定的な給与のため生活が安定する。
会社にとっては、残業時間削減を期待できる。
一定の効果があることはあるのでしょうが、もう限界ですね。
制度導入当初に比べて仕事量が減ってきているなかで、会社が固定残業代のような固定的な賃金を支給できる余裕がなくなってきているのです。
結論
会社は、労働時間、残業時間、深夜労働時間、休日労働時間をきっちり集計管理して、合法的な残業代を支給しましょう。
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