特別手当は支払わないでください
「先月は特別手当があったのに、今月はなぜ支給されないのですか?」
こうした質問はよく聞かれます。
取引先の都合で受注量が急増した、
繁忙期だったため、
夜遅くまで残業をしてくれたから、
退職者の業務を引き継いでもらったから、
など特別に賃金を支払いたい気持ちは理解できます。
しかし、私の意見は、「特別手当は支払わないでください」。
特別手当は支払うべきではない理由
特別手当は、就業規則や賃金規程に明記されていない場合がほとんどです。
仮に規程があったとしても、「会社が認めたときに必要な金額を支払う」という程度であり、金額や対象者が不明確なため、トラブルや不信感を招く原因となります。
一度支払うと、従業員は次回も支給を期待するようになり、もし支払われなければ、労働意欲が低下したり、勤務態度が悪化することが考えられます。
どうしても支払いたいのであれば、賞与として支給する方が適切です。
特別手当とは
特別手当とは、基本給や賞与とは別に、企業が従業員に対して特定の条件や成果に応じて支給する給与の一部です。
これは、労働基準法などで定められたものではなく、企業が独自に設定できます。
会社によっては、社長賞、敢闘賞、努力手当等の名前が使われることがあります。
特別手当が支給される理由は、
突発的な繁忙期に長時間労働をしてくれたり、
急な休日にも出勤してくれたり、
特に難しい取引先への対応をしてくれたり、
会社に対する貢献に対する感謝の気持ちとして支給されることがあります。
特別手当は従業員のモチベーション向上に有効な手段ではありますが、一方でいくつかの問題点も存在します。
特別手当の3つの問題点
(1)支給根拠が不明確
特別手当の支給根拠が不明確だと、従業員間で不満や不公平感が生じることがあります。
「先月は支給されたのに今月は支給されない」
「Aさんには支給されたのに自分には支給されない」
「こんなに大変な仕事をしたのに支給されない」
といった声がよく聞かれます。
(2)残業代への影響
特別手当は、残業代の計算から除外できるわけではありません。
慶弔見舞金や引越しの一時金等、一時的な支給を除いて、金額の多い少ないはあっても、毎月支給される特別手当も残業代の計算に含めなければなりません。
(3)社会保険料へも影響
特別手当が臨時の賃金でない場合、社会保険料の計算にも影響を及ぼします。毎年行われる算定基礎届に基づいて、特別手当を含む月給の平均額が算出され、月額変更届が必要になる場合もあります。
まとめ
特別手当は、従業員のモチベーション向上には有効な手段であるものの、
支給根拠を明確にして、就業規則や賃金規程に明記してから支給してください。