1日の所定労働時間を6時間30分するとスッキリする

 

1か月の実際の労働日数が25日以上ある運送会社や建設会社では、残業時間、有給休暇取得、休業手当が極めて難題になっています。

思いもよらぬ未払残業代請求、有給休暇取得、休業手当の支払い等々、法改正があったものもあれば、止むを得ず発生するものもあり、何から着手すればよいのかわからない状態が続いています。しかし、残業時間、有給休暇所得と休業手当を一気にスッキリ解決する方法があります。

結論を言うと「1日の所定労働時間を6時間30分(または6時間40分)」にする。

こうすることで所定労働日数が明確になり、残業時間、有給休暇取得、休業手当をスッキリ解決できます。

 

理由その1 残業時間

現在、労働基準法では、1週間の労働時間が40時間、1日の労働時間が8時間までと定めてます。

この時間を超えて労働させると時間外労働(残業)になり割増賃金を支払わなければなりません。特に1週間40時間超えの残業時間が忘れられていますので、この1週40時間超えの残業時間計算を忘れないことを目的のひとつとします。

多くの会社では1日の所定労働時間は8時間になっているので月曜から金曜までの5日間を所定労働時間に勤務すると40時間になります。同じ週の土曜日にも出勤すると、勤務開始時刻から残業になり、割増賃金を払わなければなりませんが、多くの会社でこの1週間40時間超えの時間を見逃していて、割増賃金を支払ってません。月給制の会社でも日給制の会社でも割増賃金が発生します。

「当社は日給制なので出勤した日数に日給額をかけているから割増賃金は必要ない」、と考えている会社もあるようですが、1日の所定労働時間が8時間の会社で5日間働いたら6日目は勤務開始時刻から通常の賃金と2割5分以上の割増賃金が必要になります。

1日の労働時間が8時間を超えた時に割増賃金がつくことは広く知られていますが、1週間の労働時間が40時間を超えた時間の割増賃金のことはそれほど知られていません。ご注意ください。

法律で労働時間を確認します。
労働基準法では労働時間を次のように定めています。

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

法定労働時間は1週間で40時間と1日で8時間と2つあります。
そして、この時間を超えた労働時間を一般的に残業時間といい、割増賃金を支払わなければなりません。

もう一度繰り返します。残業時間は1週間40時間を超えた時間と1日8時間を超えた時間の2つがあります。この2つの残業時間で重複する時間があれば、その重複した時間は除外できます。(1日8時間を超えた時間と週40時間を超えた時間はどちらかしか残業時間になりません)

(例1)1日の所定労働時間が8時間で6日間(月曜日から土曜日)毎日10時間労働した場合
1日10時間(所定労働時間8時間+残業時間2時間)×6日=60時間
月 10時間=8+2
火 10時間=8+2
水 10時間=8+2
木 10時間=8+2
金 10時間=8+2
土 10時間=8+2
計算を分かりやすくするために所定労働時間(8時間)と残業時間(2時間)に分けました。
① 1週間の残業時間
月曜日から金曜日までの所定労働時間が40時間なので土曜日は勤務開始時から残業時間になり、土曜日の所定労働時間8時間が残業時間。(この土曜日の労働時間を残業と認識してない会社が多いのです)
② 1日の残業時間
月曜日から土曜日までの所定労働時間の8時間を超えた時間である2時間×6日=12時間も残業

この週の残業時間は、①8時間+②12時間=20時間

《注意!》 残業時間を計算するときは1日ごとに1分単位で計算します。

それでは、1日の所定労働時間を6時間30分(または6時間40分)にして、所定労働日を週6日にします。

(例2)1日の所定労働時間が6時間30分で6日間(月曜日から土曜日)毎日10時間労働した場合

先ほどの例1と同じ労働時間で考えてみます。
1日10時間(所定労働時間6.5時間+残業時間3.5時間)×6日=60時間
月 10時間=6.5+3.5
火 10時間=6.5+3.5
水 10時間=6.5+3.5
木 10時間=6.5+3.5
金 10時間=6.5+3.5
土 10時間=6.5+3.5
計算を分かりやすくするために所定労働時間(6.5)と残業時間(3.5)を分けました。
① 1週間の残業時間
1日の所定労働時間6時間30分×6日=39時間なので、週法定労働時間の40時間を超えません。
(または6時間40分×6日=40時間なので週の所定労働時間40時間を超えません)
1週間40時間超えの時間は0時間。

② 1日の所定労働時間を超える時間
1日の法定労働時間8時間を超えた時間が残業時間ですが、計算を分かりやすくするために所定労働時間を超えた時間3.5時間×6日=21時間が1日ごとの残業。

この週の残業時間は、①0時間+②21時間=21時間
(1日の所定労働時間を6時間40分にすれば、週の残業時間は20時間)

1日の所定労働時間が8時間の例と6時間30分の例の2つを比較すると週の残業時間に1時間の違いが出ますが、大きな違いではありません。(6時間40分にすると違いは無し)

目的である1週40時間超えの残業時間が明確になり計算漏れがなく、未払賃金が発生しません。もちろん、1日の所定労働時間を超えた残業時間に対して割増賃金を支払います。

 

 

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理由その2 有給休暇取得

有給休暇の取得日も曖昧で問題が発生しています
有給休暇は、所定労働日(本来の労働日)に取得しなければなりません。
いつでもいいから休ませて1日分の給料を支払えば有給休暇取得になるということではありません。

所定労働日が不明確な会社では有給休暇を取得する日を間違えており法律通りの有給休暇の取得をできてません。

1日の所定労働時間が8時間、1週間の所定労働日が月曜日から金曜日の週5日の場合で、恒常的に土曜日も勤務している会社があります。その会社では仕事が少ない土曜日に有給休暇を取得させることが慣行になっていますが、これでは正しい有給休暇の取得にはなりません。このような取得方法では有給を取得したことならないので、会社からのご厚意として有給休暇分の金銭を支払っているだけなのです。

有給休暇を正しく取得させるためには所定労働日を明確化が不可欠。

この有給休暇取得も1日の所定労働時間を6時間30分にすればスッキリします。

理由その1残業時間で説明したとおりに、1日の所定労働時間を6時間30分にすれば、1週間の所定労働日は6日にでき、月曜日から土曜日を所定労働日として、仕事量が減少したときの土曜日に有給休暇を所得させることができます。
所定労働日である土曜日に有給休暇を取得することは合法。

 

 

理由その3 休業手当

さらに会社の都合で仕事量が少なくなり所定労働日に休んでもらう時には休業手当を支払わなければなりません。現在のコロナ禍での状況でも同様。

その休業手当を支払う時にも注意が必要です

休業手当とは、所定労働日(本来の労働日)に会社の都合で休ませた従業員に対して支払わなければならない一定額以上の賃金です。

この休業手当に関連するのが雇用調整助成金ですが、支給申請窓口で会社の考え方と窓口の見解の不一致が続出しています。
仕事量の減少で労働日が減ったので休業手当を払い、雇用調整助成金を支給申請したが、申請窓口で断られたという事例が多数あります。この断られた理由は所定労働日

例えば、毎月26日労働している会社で、会社の都合で労働日数が23日に減った、その3日分の休業手当を支払い、雇用調整助成金の申請をしたが断られた。理由は、法定労働時間を超えているので残業が減っただけ。残業が減った分の手当を支払っても休業手当にはならない。だから雇用調整助成金の対象にならない。

確かに申請窓口の言い分は正しいのです。
1日の所定労働時間が8時間であれば、月間所定労働日は21~22日にしかなりません。
計算方法は、(1か月の暦日数30日または31日÷1週間の日数7日間)×1週間の法定労働時間40時間で月間所定労働時間が171時間または177時間。この171時間または177時間を1日の所定労働時間8時間で割ると21日または22日。
30日の月は所定労働日数が21日、31日の月は22日になり、それを超える労働日は残業です。残業が減った分の休業手当を支払っても雇用調整助成金の対象にはなりません。

 

これを回避するにも、1日の所定労働時間を6時間30分。

そうすれば月曜日から土曜日が所定労働日であるので、土曜日に会社の都合で休業させて休業手当を支払う、支払った休業手当を雇用調整助成金の申請をすることが出来ます。

理由2有給休暇でも説明しましたが、所定労働日を明確にしておけば休業手当を支払う日が明確になり、雇用調整助成金を支給申請する時にも支給申請が容易になります。

 

 

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1日の所定労働時間を6時間30分にするデメリット

この1日の所定労働時間を6時間30分にすることはデメリットもあります。
(1)仕事が少なくなった土曜日に休ませることができますが、この土曜日は所定労働日(本来労働日)になってますので休みを取らせて無給ということにはできません。有給休暇を取らせるか、休業手当を支払うことが必要になります

(2)ハローワークで求人する時に、求人票の休日を記入する欄に年間休日50何日+夏季休暇何日+年末年始休暇何日と書くと休日が少ないので応募者が少なくなることが予想されます。

(3)現在、1日の所定労働時間が8時間00分の会社が6時間30分に変更するときには、休日数が減り労働日が増えるので、従業員の同意が必要になります。

 

 

もう一度結論

残業時間、有給休暇所得と休業手当を一気に解決するには、

「1日の所定労働時間を6時間30分(または6時間40分)」

にする。

 

 

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