給料体系・賃金規程・労使協定・給料明細、会社を守る4つの盾

賃金トラブルから会社を守るには4つの盾が必要です。
その4つの盾とは、

1.給料体系

2.賃金規程

3.労使協定

4.給料明細

 

 

 

 

 

 

 

1.給料体系

・シンプルで分かりやすい給料体系

・時給日給型か歩合給(併用型は残業代の計算が煩雑なのでおススメしません。60時間以下と60時間超えを時間の分と歩合の分とをそれぞれ計算。深夜割増も休日割増も同様に時間の分と歩合の分とをそれぞれ計算しなければなりません)

・基本給のみで、諸手当は無し(通勤手当、家族手当等の割増賃金に含まれない諸手当はあってもよい)

・作業手当のような仕事に関する不定期な賃金は年3回の賞与

・複雑な給料体系にして、給料計算代行業務を受注するコンサルタントや士業がいるようですが、市販の給料計算ソフトを使用して社内で計算できることが重要です。

 

2.賃金規程

●規程類を作成して、届出したら、必ず周知

賃金規程や就業規則を労働基準監督署に届出る前に従業員代表者から意見書に意見を記入してもらいますが、労働組合がない会社では、従業員代表者の選出方法にも注意があります。管理職や会社が指名した者は代表者にはなれません。挙手や投票といった方法が一般的です。

※大切なことですが、労働トラブルで「賃金規程や就業規則なんか見たことがない」と言われないように周知(いつでも見られる状態)しておいてください。

 

●基本給や諸手当の支払い根拠を明記

時給、日給、歩合の説明と諸手当の支払い根拠を賃金規程に明記することで、どうして手当てがないのか? 、有給の時の賃金はどのように決めたのか? 欠勤したときの減額はどうなっているのか? 等に明快に回答できる。

●賃金規程と現状を一致させる

給料体系等を変更した後で賃金規程も必ず変更します。賃金規程と実際の運用が一致していないと賃金トラブルになったときに大変です。

 

●賃金規程を作成したら従業員説明会を実施
従業員説明会の実施は義務ではありませんが、開催することで従業員との信頼感アップには効果絶大です

 

 

3.労使協定

●36(サブロク)協定
長時間労働させただけでは労働基準法違反にはなりません。36協定で定めた時間を超えて残業や休日労働させたら労働基準法違反になります。

 

●有給休暇に関する労使協定
有給休暇の賃金は、
(1)労働基準法で定める平均賃金、
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、
(3)健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額
のいずれかを支払う必要があり、いずれを選択するかについては、就業規則などに明確に規定しておく必要があり、(3)による場合は、労使協定を締結する必要があります。

歩合給では、 (1)は通常の賃金が決められません、(2)は有給取得時期によって平均賃金を計算するので高低の不公平が発生します。そこで有給休暇取得時期によって(3)にするのですが、労使協定が必要になります。

さらに有給休暇を5日間は従業員の任意の時期に取得でき、残りは会社が時期を指定できる計画的付与という制度があります。この計画的付与には労使協定が必要です。

 

●賃金から控除する労使協定
労使協定を結んだ場合
(1)物品等の購入代金
(2)社宅・寮その他の福利厚生施設の利用代金
(3)住宅等融資返済金
(4)財形貯蓄金(勤労者財産形成促進法に基づき、事業主が労働者に代わって金融機関等へ払込むことができる)
(5)組合費
なお、実際に賃金から控除するためには、労使協定に加えて対象となる労働者からの同意を得る、または就業規則等に根拠規定を設ける必要があります。

ただし、控除額の上限があり、民法や民事執行法の規定により、賃金の4分の3(その額が33万円を超える場合は33万円)に相当する部分については、使用者側からは控除することはできません(民法第510条、民事執行法第152条)。つまり、控除額の上限は4分の1までとされています。

さらに、「従業員が社用車の破損や会社備品の紛失等した場合、賃金から損賠賠償金を控除する」とした労使協定を結んだとしても、基本的には控除できないと考えておくのが無難です。

 

4.給料明細

賃金トラブル予防のためには給料明細に次のことを明記してください
・労働日数
・労働時間
・時間外労働(残業)時間
・深夜労働時間
・休日労働時間
残業時間や深夜労働時間、休日労働時間を明記したくない会社が多いのですが、これらを明記しないことで起こる賃金トラブルが多いのも現実です。

 

また、労働基準法には給料明細の定めはありませんが、賃金台帳のことは決められています。
労働基準法で定められた賃金台帳の記載事項
(1)賃金計算の基礎となる事項
(2)賃金の額
(3)氏名
(4)性別
(5)賃金計算期間
(6)労働日数
(7)労働時間数
(8)時間外労働、休日労働及び深夜労働の労働時間数
(9)基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
(10)労使協定により賃金の一部を控除した場合はその額
賃金台帳は従業員に開示する必要はありませんが、一般的な給料計算ソフトでは、給料明細と賃金台帳を同時に作成されます。

 

少人数だからエクセルのような表計算シートで十分と思わずに、市販の給料計算ソフトを導入してください。市販のソフトならメーカーに問い合わせれば操作方法を押してもらえますし、ネット検索すれば操作方法の動画もありますので安心です。料金がもったいないからといって自作の給料計算シートを使うよりも、市販のソフトの方がはるかに効率的です。