雇用保険の失業給付は退職金ではありません

「退職の手続きをお願いします。離職票の発行もお願いします。疲れたから当分就職する気がないけれど、失業保険は受給したいんだそうです」

 

年何回かは顧問会社の担当者から聞く言葉です。

それを聞くと私は次のようにお答えします。

「離職票は発行します。でも失業給付は受給できません。
失業給付は、「働く意思があり」なおかつ「すぐにでも働ける状態」の人しか受給できません。雇用保険の失業給付は退職金ではありません」

このように言うと、「そうなんですか、初めて聞きました」と返されることがあります。

総務や人事担当者でも知らいない人がいるのですね。

それでは厚生労働省のホームページを確認してみます。
以下、厚生労働省のホームページから

失業とは
「失業」とは、離職した方が、「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にある」ことをいいます。したがって、次のような状態にあるときは、失業給付を受けることができません。
* 病気やけがのために、すぐには就職できないとき
* 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
* 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
* 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき

 

結婚するから、出産するから、介護をするからという理由で退職する人がいます。
これらの人が退職すること自体は何も問題はありません。
しかし、働く意思はあっても、すぐにでも働ける状態でにないので雇用保険の失業給付は受給できません。

雇用保険の失業給給付(正式には基本手当といいます)を受けるにはどうするのでしょうか?

 

また厚生労働省のホームページから

基本手当の支給を受けるためには
失業の認定を受けようとする期間(認定対象期間。原則として前回の認定日から今回の認定日の前日までの期間)中に、原則として2回以上(基本手当の支給に係る最初の認定日における認定対象期間中は1回)の求職活動(就職しようとする意思を具体的かつ客観的に確認できる積極的な活動のことをいいます。)の実績が必要となります。

また、自己都合などで退職された場合、離職理由によっては、待期期間満了後3か月間(2か月間)は基本手当が支給されません(離職理由による給付制限)が、この期間とその直後の認定対象期間をあわせた期間については、原則として3回以上(給付制限期間が2か月の場合は、原則として2回以上)の求職活動の実績が必要となります。

 

最後に出てきた求職活動とは何でしょうか?

またまた厚生労働省のホームページから

 

求職活動の範囲
求職活動の範囲(主なもの)は、次のとおりであり、単なる、ハローワーク、新聞、インターネットなどでの求人情報の閲覧、単なる知人への紹介依頼だけでは、この求職活動の範囲には含まれません。
1. 求人への応募
2. ハローワークが行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、各種講習、セミナーの受講など
3. 許可・届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)が行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、求職活動方法等を指導するセミナー等の受講など
4. 公的機関等((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、地方自治体、求人情報提供会社、新聞社等)が実施する職業相談等を受けたこと、各種講習・セミナー、個別相談ができる企業説明会等の受講、参加など
5. 再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験の受験

ここで中小企業の経営者や人事担当者は思い当たることがあるかもしれません。

・ハローワークから面接希望の電話があったので予定を空けておいたのに面接に来ない。断りの電話でもあればまだしも、何の連絡もなく待たされた挙句に来ない

・当社の業務内容には向いてない求職者が面接に来て、就職の意欲も感じらない

・面接に来ても履歴書さえ持参しない

なぜこんなことがあるかというと、求職活動をしなければならないからなのです。
働く意思を見せるために、就職するつもりはないが、面接だけは受けておこうという求職者(受給者)がいるからなのです。

大事な時間を無駄使いさせられて、こんなことは会社にとっては迷惑以外の何物でもありません。

このようなことが続いて、不審に思った社長がハローワークに問い合わせたところ、
「窓口で就職の意思を確認したので、ハローワークとしては断れないのです。申し訳ございません」と謝られたとのことです。

 

最後に不正受給についての注意も厚生労働省のホームページに記載されています。

不正受給の典型例
* 実際には行っていない求職活動を、「失業認定申告書」に実績として記すなど偽りの申告を行った場合
* 就職や就労(パートタイマー、アルバイト、派遣就業、試用期間、研修期間、日雇などを含む。)したにもかかわらず、「失業認定申告書」にその事実を記さず、偽りの申告を行った場合
* 自営や請負により事業を始めているにもかかわらず、「失業認定申告書」にその事実を記さず、偽りの申告を行った場合
* 内職や手伝いをした事実及びその収入を「失業認定申告書」に記さず、偽りの申告を行った場合
* 会社の役員に就任(名義だけの場合も含む。)しているにもかかわらず、「失業認定申告書」に記さず、偽りの申告を行った場合
* 定年後、「積極的に就職しようとする気持ち」や「いつでも就職できる能力(身体的・環境的)」がなく、しばらく失業給付を受け、受給終了直後に年金を受給しようと考えている者が、「失業認定申告書」により偽りの申告を行った場合

こういった不正行為が行われた場合、その不正行為があった日以降の日について、基本手当等が一切支給されず、不正に受給した基本手当等の相当額(不正受給金額)の返還が命ぜられます。さらに、返還が命ぜられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付(いわゆる「3倍返し」)が命ぜられることとなります。
したがって、安定所に提出する書類には事実をありのままに記入し、不正に雇用保険を受給することのないようにしてください。

 

最後に出ていますが「3倍返し」だそうです。

何処かのドラマで似たようなセリフを聞いたことがあるかもしれませんね。

 

 

そもそも保険とは、「偶発的事故の発生に対する損害を填補する制度」なので自己都合で退職しても失業給付が受給できること自体、保険ではないのではないかとの議論もあります。

しかし、雇用保険を含む社会保険は「社会保障上、国民の遭遇する事故・災害などによる損害の補填および生活の保障を目的とする強制保険」ですので、国民保護のために自己都合退職者でも受給できるのです。しかし自己都合退職者は一定期間待機期間という失業認定されない期間を設定してバランスを取っているのです。

 

最後にもう一度
雇用保険の失業給付は退職金ではありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です