変形労働時間を導入したからといって残業時間が削減できるとは限らない

変形労働時間を導入したからといって残業時間が削減できるとは限らない。
というよりも残業時間が増えることの方が多い。

2020年8月30日の朝日新聞デジタルの記事です。

「 残業しても残業じゃない? 変形労働時間制の狙いと課題

ほかの時期に労働時間を減らして穴埋めすれば、残業代などを払わずに働き手に長時間の勤務をさせられる「変形労働時間制」を導入する職場が増えています。人件費の節約や休日の固め取りなどにつながる一方、働き手が長時間労働に陥りやすいことへの懸念は根強く、導入の手続きがずさんだと裁判で無効と判断されるケースもあります。
労働時間の上限は、原則として「1日8時間、1週40時間」と法律で決まっている。これを超えて働かせる場合、あらかじめ労使で協定を結び、超えた分の残業代などを払う必要がある。
この縛りを、一定の条件のもとで外すのが変形労働時間制だ。
たとえば、ある日の労働時間が8時間を超えても、逆に労働時間が短い日を作るなどして超えた分を吸収すれば、時間外労働をしたことにはならない仕組みだ。1カ月・1年など一定の期間をあらかじめ定め、その期間全体でみたときに、1週あたりの平均労働時間が法定の40時間以内に収まっていれば、残業代を払う必要はなくなる。
制度の原形は1947年からある。お中元シーズンや年末が忙しいデパートのように、時期による繁閑や営業時間が比較的はっきりしている業種での適用が想定されている。会社の人件費負担の緩和だけでなく、忙しい時期に長く働くかわりに他の時期に休日を増やせば、全体としては労働時間を減らせるとの期待もある。
目立つ学校現場での導入
ただ、そもそも1日8時間を超… 」

https://www.asahi.com/articles/ASN8X02XVN8KULFA01S.html

この新聞記事にある「ほかの時期に労働時間を減らして穴埋めすれば、残業代などを払わずに働き手に長時間の勤務をさせられる」というのは正しいのでしょうか? 確かに会社によっては繁忙期と閑散期が明確に存在することがありますが、多くの会社では年中忙しいというのが現状ではないでしょうか。

この記事では、「他の時期」とあるのでまだ良い方ですが、ネット情報では「当社は変形労働時間制だから、今日の仕事が2時間早く終わったから、昨日の2時間残業と相殺できる、だから2日間を通算すれば残業時間なし」ということ記事も見かけますが、それはできません。

変形労働時間の残業は、1日、1週間、1変形期間(1か月、1年)の3回分を計算しなければならないのです。

1か月間や1年間の中に繁閑がある会社では、1週40時間、1日8時間の法定労働時間の原則に柔軟性を持たせて、例外として、1週間に40時間を越えてまたは1日に8時間を超えて所定労働時間を設定すことができるのが変形労働時間です。変形労働時間を導入することで、残業時間を削減できることがあるのですが、1か月間や1年間の中に繁閑がなければ変形労働時間は導入できません。この変形労働時間は、原則に対しての例外ですので、原則よりも運用情方法が厳格に規定されています。

 

結論からいうと、変形労働時間は、会社カレンダーがきっちり決められる製造業や事務職の人にしか適用できません。

なぜかというと、会社カレンダーはその変形期間(1年や1か月)が始まる30日以上前に決められていなければならず、原則として途中で変更することはできません。途中で変更したり会社の都合の良いように運用を変えることをすれば、変形労働時間が無効になり、さかのぼって割増賃金の支払いが必要になります。いったん決めた会社カレンダーの途中で予測できなかった急な仕事が入り、カレンダーどおりに営業できなくなったとしても、当初に定めたカレンダーで労働時間を計算します。そのため、結果として残業時間が増えることがあります。

年間変形労働時間を採用すると、年間暦日数が365日の年で、1日の所定労働時間が8時間、休憩時間が1時間であれば、1年間の法定労働時間の上限は2,085時間、年間最大労働日数は260日、最低休日は105日です。

そしてこの260日の労働日の中から5日以上の有給休暇を取得させなければなりません。

 

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