雇用調整助成金特例期間延長に必要な3つの変更点

新型コロナウイルス感染拡大に伴い国内どころか世界中の経済活動が破壊されています。
日本の労働基準法では、会社の都合で休業させるには、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません。その休業手当の一定割合を雇用調整助成金として会社が受給できます。
といっても所定の申請書に必要な資料を添付して申請しなければなりません。

この雇用調整助成金が全国的に大活躍したのは、リーマンショックの時ですから10年以上前のこと。
今回の新型コロナでは、政府の緊急対策として、雇用調整助成金の大幅な拡充が図られました。
通常では休業手当の 2/3(中小企業)、1/2(大企業)の助成割合ですが、コロナの特例措置では、助成率が 4/5(中小企業)、2/3(大企業)。さらに解雇等を行わず、雇用を維持している場合であれば、 10/10(中小企業)、3/4(大企業)。
なんと、解雇しない中小企業には休業手当の全額が助成されるのです。
(後述しますが、正確には支払った休業手当とは限りません)

助成金額でも驚くべき大盤振る舞い。通常では、休業1日当たりの上限額は 8,370円(令和2年8月1日現在)ですが、コロナの特例措置では 15,000円になります。
この特例措置の期限が令和2年9月30日ですが、それを12月31まで延長されるようです。

今年、30回以上雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の支給申請をした社会保険労務士からの意見として、次の3つの点を変更すれば賛成。

 

1. 助成額の引き下げ
助成額の上限が8,330円(令和2年5月1日では)だったのを、イギリスを超えて世界最高レベルに引き上げるとのことで、15,000円に設定したのですが、これを維持することは労使双方のモラルの面でも問題あり。これでは、休業手当のほとんどを会社が払わなくても良いのです。そのため、会社は必要以上に休業日数を増やしたり、従業員も働かなくてもそれなりの給料がもらえるので労働意欲がなくなったりすることもあり得ます。会社の自己負担がなければ真剣に考えることなんかありません。

 

2.助成金の算定方法を実際に支払った休業手当の額に統一
一般的に1日当たりの助成金額は休業手当の何%といわれていますが、正確には会社の従業員数によって2つの計算方法があります。
(1)従業員20人以下の会社では、実際に支払った休業手当の金額が助成金額になります(1の上限があります)。

多くの人がこのように考えています。

(2)従業員20人超の会社では、実際に支払った休業手当ではなく、前年度の労働保険料申告書に記載した雇用保険料算定賃金(雇用保険加入者の賃金総額)を雇用保険加入者の月間平均で割り、さらに年間所定労働日数で割った金額(平均賃金額)が1日当たりの助成金額の基準になります(1の上限があります)。
これが混乱のもとで、会社にとっては損得が生じます。雇用保険加入者の平均賃金額が助成金額の基準になるので、給料が高い人を休業させるよりも、給料が低い人を休業させた方が会社としては受給できる助成金が多くなるのです。

例えば、従業員40名のある会社の雇用保険加入者の平均賃金額が10,000円、給料日額12,000円のAさんと給料日額9,000円のBさん、 休業手当の支給率は100%とします。
Aさんが1日休業したら、1日の休業手当は12,000円
Bさんが1日休業したら、1日の休業手当は9,000円

この会社は従業員が40名なので各人の休業手当ではなく、前年度の雇用保険加入者の平均賃金額10,000円が休業1日当たりの助成額です。
この場合、平均賃金額よりも低い給料の従業員を休業させれば、休業手当を超える助成金が受給できるのです。
つまり、会社としては、給料の安い人を休業させると得になり、給料の高い人を休業させると損になります。

 

3.休業対象者の分散
ある特定の従業員だけを休業させても助成金が支給されます。
(従業員数と休業日数によっては対象にならないことがあります)
これは2で述べたように給料が低い従業員を集中的に休業させることでも助成金が受給できますので、仕事が出来ない人や給料が低い人たちだけを休業させることもあり得ます。
その対策として、ある特定の従業員にだけ休業が集中しないように、休業日数と従業員の割合を設定するべきです。

 

令和3年1月以降から段階的に特例措置を見直すとのことですが、果たしてどうなることでしょうか?
雇用調整助成金を拡充し、特例措置を延長したことで失業率の上昇抑制には一定の効果があると思われますが、現状を正確に把握できないと政策判断を誤ることになりますので、特例措置の運用は注意しなければなりません。

2000年のITバブル、ドットコムバブル崩壊や2008年のリーマンショックの時にも、雇用調整助成金が活躍しましたが、その当時は、「ゾンビ企業の延命策」のように揶揄され、産業構造の進展の妨げとも言われていました。果たして今回の特例措置は後に何と言われるのでしょうか?

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