運送会社の社長さんへ、稼ぎたいから仕事を入れてくだいというドライバーには仕事をさせないでください!
「当社のドライバーが亡くなりました。どうしたらよいのかわかりません。ご来社ください」
連休明けの平日の朝10時くらいに顧問会社ではないのですが5年前に1度ご訪問した会社から電話がありました。
事が事なので早めに訪問日を決めて訪問。
訪問して詳しい話を聞くと、
ドライバー(長距離運行はないが月間27~28日勤務)が仕事を終えて倉庫で仕事をしている間に倒れたようで、朝一番に出社した他のドライバーが発見して救急車と警察を呼んだが手遅れ。心筋梗塞の持病があり、通院中で、家族も心配していたようでしたが、おそらく原因は過労死。労災。
なぜかというと100時間以上の残業(法定労働時間を超える労働時間と法定休日労働時間)が恒常化していて、本人からも「稼ぎたいので、もっと仕事を入れてください。お金が必要なのです。仕事を入れてくれないと退職します。稼げる会社に転職します」ということを日頃から言っていたとのことです。それに負けて社長が渋々ながら仕事を入れすぎてました。
もちろん長時間労働で改善基準告知にも違反。
ここで長時間労働と労災の関係を見てみます。
長時間労働は、労働者の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、ストレス、疲労、心身の不調を引き起こすことがあり、労災リスクを高め、場合よっては、過労死にもなります。
過労死ラインとは
「過労死ライン」とは、健康障害に発展する恐れのある時間外労働時間で、労災認定の基準として用いられています。
従業員の業務上発生した病気や怪我に対しては、労働基準監督署が労災に該当するかを認定し、労災保険が適用され給付されます。特に、時間外労働や休日労働など過重労働がもたらす疲労の蓄積は、脳や心疾患との関連性が高いと医学的知見からも分かっていて、健康障害と長時間労働の関連性が強いと判断されます。
通常、過労死ラインは、次のようになります。
・発症日の直近1ヵ月で、残業時間が月100時間を超えていること
・発症日前2ヵ月〜6ヵ月間の残業時間が月平均80時間を超えていること
これに加えて、2021年9月以降は、残業などの時間が過労死ラインに達していない場合でも、これに近い残業時間や労働時間以外の負荷要因(休日の無い連続勤務、不規則な勤務、勤務間インターバルが短い勤務や、肉体的や精神的な緊張が伴う業務が日常的に行われていること等)がある場合、関連性が強いとされ、時間外労働の上限規制に達していなくても、過労死等の労災認定を受ける可能性が高くなります。
労災発生時の会社の責任
労災が発生すると会社の安全配慮義務違反(※)が問われ、損害賠償や慰謝料請求の対象になり得ます。どんな事業主(個人事業を含む)でも人を使っていれば(臨時のように雇用してなくても)労災保険の加入義務があるので、労災保険による給付(治療代と休業補償等)が行われます。万が一、労災保険に加入してない事業主の業務で労災事故があっても、被災者保護を優先しますので補償は受けられますが、会社には罰則があります。
※労働契約法
(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
結論
長時間労働は労災のリスクを高めるため、会社はドライバーの拘束時間、労働時間、残業時間、深夜労働時間、法定休日労働時間、休息期間を集計して適切な労働時間を管理することが重要です。
自動車運転手には、それ以外の労働者にはない「改善基準告知」で拘束時間(労働時間+休憩時間)まで制限しているのです。
それだけドライバーは労災リスクが高いのです。
話題になっている運送業界・物流業界の2024年問題も、ドライバーの健康管理、安全管理が最大の目的で、センターピンは労働時間管理なのです。
稼ぎたいからもっと仕事を入れてくださいと頼まれても安易に仕事を入れてしまっては健康、安全面で極めて高い代償を払うことになります。拘束時間を集計して適正に管理してください。
もう一度言います。
稼ぎたいから仕事を入れてくだいというドライバーには(改善基準告知を超える)仕事をさせないでください!