雇用調整助成金の特例延長は選挙対策

雇用調整助成金の特例延長が日経新聞電子版に掲載されています。

 

首相「賃上げの流れ強固に」 雇調金の特例延長を表明
新型コロナ
2021年7月21日 19:12

菅義偉首相は21日、首相官邸で開いた経済財政諮問会議で、新型コロナウイルスに伴う雇用調整助成金の特例措置を12月末まで延長すると表明した。最低賃金引き上げを前に中小企業を支援する。「賃金格差の拡大を是正し、賃上げの流れをさらに強固なものにする」と述べた。

首相は新型コロナによる売上高の減少と賃上げによる中小企業のコスト増への対策が必要だと訴えた。「事業の存続と雇用の維持に向けて丁寧に支援する必要がある」と語った。

雇調金の特例延長は10月からの最低賃金の引き上げに備え、企業の負担を軽減する狙いがある。年内に追加策も検討する。

最低賃金は例年10月に切り替わる。中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は16日に2021年度の最賃を全国一律で28円を目安に引き上げるよう答申した。目安通りであれば、全国平均で時給930円になる。

雇調金は景気悪化などで従業員を休ませる際に企業が支払う休業手当の一部を国が助成する。新型コロナの感染拡大で売り上げが落ち込む企業に1人当たり最大1万5千円を支給している。

いまは従業員が休業する延べ日数が所定労働日数の2.5%以上との給付条件を設けている。中小企業が時給を一定以上引き上げれば、この要件をなくし、10月から3カ月間助成金を出す。助成率は12月末まで10分の9以上を維持する。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA216200R20C21A7000000/

 

 

雇用調委助成金の特例が延長されるようですが、本当に雇用対策なのでしょうか?
失業率の悪化がある程度止まっているとも、雇用の流動化が促進されないともいわれます。

ですが、個人的な感覚ですが、選挙対策のように感じます。

新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主が対象になっていますが、果たして本当なのでしょうか?
なぜならこの記事には「最低賃金引き上げ」に伴うという言葉が入っています。

感染症の影響を受ける事業主を対象にしていることはまだわかりますが、この助成金は一時しのぎの時間稼ぎなのに、その間の政府の動きがよくわかりません。

論点をずらしたマスコミの大袈裟な報道を真に受けて本当の雇用対策が見えにくく、今回の特例延長も、このタイミングでは、何かがあるのでしょう。

何があるかというと衆議院総選挙です。

このままマスコミに振り回されて感染拡大(?)で混乱させられてはとても選挙どころではないので、何らかの選挙対策を打ち出さなければなりません。
それが雇用調整助成金の特例延長でしょう。

本来であれば、雇用調整助成金は、緊急事態宣言が終了した月の次月末日で特例が終わります。現在の緊急事態宣言は8月22日に終了予定なので、9月末日で特例が終了。
特例が終了するとほとんどの会社では雇用調整助成金が受給できなくなります。これは雇用調整助成金の受給期間は1年間で、その後1年間を経過して再度受給要件を満たせば受給できます。原則どおりでは雇用調整助成金の受給期間が受給開始1年間という制限があるのですが、特例では1年間という受給期間を撤廃しているのです。そのため1年を超えて14カ月や16カ月継続して受給している会社もあります。

 

この特例が終わると、休業手当を支払うことは労働基準法に定めがあるので支払わなければなりませんが、雇用調整助成金は支給されず、会社からの持ち出しになります。となれば、解雇しなければならない会社が出てくることでしょう。

そうなるとマスコミや野党の絶好の攻撃材料になります。

これでは与党はたまったものではありません。

それならということで。緊急事態宣言の終了時期に関わらず雇用調整助成金の特例を延長することにしたのでしょう。

 

このように特例期間の延長も止むなしと思いつつも、3点の改善点を期待します。

 

1. 支給申請額の算定方法の変更
よく勘違いされますが、各人に支払った休業手当の一定割合ではなく、会社全体の雇用保険加入者の前年度の賃金を基準に計算して会社としての1人当たりの平均的な賃金日額を算出しています。

これは給料が高い人を休業させても安い人を休業させても一人として取り扱うので同じ金額になるのです。これを悪用して給料が安い人を多く休業させると会社は得するのです。

例えば、ある会社の平均的な賃金日額が12,000円だとします。給料の高い人(この場合、日額12000円を超える人)に支払う休業手当は高い給料に対しての一定割合を支払い、給料の安い人への休業手当も安い給料に対しての一定割合、しかし助成金の日額は12,000円なので、給料が高い人を休業させるよりも給料が安い人を休業させる方が、休業手当は安くて済むのに助成金の日額は一律12,000円を基準に計算されますので高くなってしまいます。

これを知れば、給料の安い人(若いし人や勤続年数が短い人)を集中的に休ませようと考える経営者がいても不思議ではありません。

なので実際に支払った休業手当を給付金額の基準にするべきです。

 

2. 日額上限額
本来であれば1日の上限が8,370円(令和3年7月22に現在)ですが、これを当時の総理大臣が世界最高水準の15,000円に引き上げるといって、15,000円に引き上げました。(引き上げた当時は仕方なかったと思われましたが)
その後、13,500円に引き下げましたが、これでも高いです。せいぜい10,000円で十分でしょう。
1年半もこの水準では、コロナ後の反動が心配です。

 

3. 残業相殺
原則として、休業期間中に残業があればそれを休業時間から差し引きます(相殺)が、特例期間中では、残業しても休業時間から差し引かれません。これを使って休業日数は変わらないが残業時間が異常に増えている会社があります。

例えば、月間所定労働日数が21日のうちに実際の労働日数が17日で休業が4日あるとその4日が助成金の対象日になります。労働日の17日に通常よりも多い残業をさせることで4日の休業時間分の残業をさせても助成金の受給金額に影響がないのです。

1日の所定労働時間が8時間とすると、8時間×21日=168時間が月間所定労働時間。この168時間を維持して労働日数17日で割ると9.88時間(9時間53分)になり、出勤1日につき約2時間の残業になります。もちろん残業代は支払います。

しかし特例期間中では残業時間は休業時間から差し引かないので、休業4日間分の助成金が受給できるのです。

残業しているのに休業させて、その休業日に対して助成金が受給できるなんておかしいですよね。

なので残業相殺をするべきだ。

以上3点ですが、冒頭で書きましたが、助成金は選挙対策なのでほとんど期待できませんが・・・。

 

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