紙とハンコは悪くない、○○を××しない管理職が悪いのだ
新型コロナウイルスの感染拡大により、都市部に通勤していた事務職を中心に、出社せずに自宅で業務を行う在宅勤務(リモートワーク、テレワーク)が増加していますが、思ったほど定着してないようです。その原因の一つとしてハンコといわれています。
在宅勤務の足かせ?
ここ10年以上前からテレワークやリモートワーク等の呼び方で注目されてきた在宅勤務ですが、思ったほど浸透しないとの報道があります。今まで、同じ時間に職場に通勤することを前提に様々な勤務体制が構築されているのですから、そう簡単に勤務体制を変えることは難しいでしょう。
自宅で仕事をするにも、各家庭の住環境、家族構成、インターネット接続環境、在宅勤務する個人個人のITに関する能力、そもそもの事務処理能力もマチマチなのですから。
在宅勤務が浸透しない理由として、やり玉にあげられているのがハンコと紙です。在宅勤務しているときに、紙の契約書、見積書や請求書に会社のハンコが必要なので、ハンコをもらうために会社に行かなければならず、会社までの移動時間が往復で2時間以上、ハンコを押してもらうのに総務部に押印申請書を出して、承認されたら押印してもらう。
この会社までの往復2時間以上は一体何なんだろう。このIT時代に紙とハンコか? とあきれている人も多いことでしょうが、紙とハンコだけが悪いわけではありません。
管理職がボトルネック?
私が取引先の担当者とメールでやり取りをしていると、どこからともなく管理職や役員が横から入ってきて、いろいろと注文を入れてくるのです。
私と担当者の間では何度もメールのやり取りや打ち合わせをして合意できていることでも、「俺は聞いてない」、「誰が良いといったんだ」等完全なる社内問題を引き起こして仕事の進行が遅れてします。そんなこんなで、最近では、取引先の担当者から「今後、私とのメールは上司2名にもCCで送信してください」と依頼されることが多くなってきました。
そういえば以前、一緒に昼食をしたときに、取引先の管理職の方が「私は1日100通以上メールが来る。ほとんどが部下からのメールのコピーだけどね」と話していたことを思い出しました。この管理職は、スマートフォンに転送されたメールが来ると即座に確認して、ニヤリとしたり、「何やってんだ?」と独り言をつぶやいたりしてました。
それらはすべて取引先と部下のメールのやり取りのコピーを見てのことだったのです。
管理職がここまでしないと部下の管理が出来ないのでしょうか。
業務量は激増するのに
ある日、私の学生時代からの友人と食事をした時のことです。
友人は金融機関の営業職で係長(非管理職)。友人が言うには、ここ数年、仕事量が異常に増えて、とてもではないが就業時間中に終わらせることが困難。守秘義務が徹底されている職場のため持ち帰り残業は厳禁、申請書を出して許可を得て残業や休日出勤。
それに加えて目標という名のノルマが年ごとに雪だるま式に上積みされていくとのこと。民間企業の営業職ですから目標があることは不思議ではないのですが、仕事量の急増は常軌を逸しているとのこと。
なかでも管理職への報告業務が年々細かくなり、外回りの営業から職場に戻ってパソコンを使っての日報作成、印刷して自分の認印を押して、管理職に提出、管理職の確認印が押されて返却、各自で日報ファイルに保管。
業務日報にしても、取引先との営業報告書にしても、新規案件に関しても管理職に報告して、決裁が下りるまでに時間がかかり、次の業務に進めず。上司は部下の訪問営業に同行して、その間は決済業務が中断。上司が帰社したところで決裁待ちの大渋滞。
仕事は増えても、職務権限が増えない
なるほど、わかった! やっぱりそうか。
管理職が職務権限を委譲しないのだ。
つまり、職務権限を委譲しない管理職が悪いのだ。
例えば、上司が職務権限を部下に委譲したならば、部下はもっと業務スピードが上がるだろうし、残業時間の削減ができるし、管理職の仕事量も軽減されるだろうし、日々刻々と発生する各種業務連絡メールが減り、管理職本来の部下の育成や部門全体の管理もできるはずです。しかし、頑なに職権限を委譲しないのです。
なぜでしょう?
答えは簡単。職務権限を部下に委譲してしまうと今まで細かいことをつついてきたことが無駄だと分かってしまうからです。職務権限を振りかざして、どうでも良い些細な注意、指導をしてきたことが不要であると分かってしまうからなのです。つまり、職務権限は管理職のアリバイであり保身の道具なのです。
結論
「紙とハンコが悪いのではない、職務権限を委譲しない管理職が悪いのだ」
業務効率化のためにも、在宅勤務の普及のためにも、管理職は職務権限を委譲しよう。