ドライバーの給料体系、時間型or歩合型 究極の二者択一

 

運送会社を守る給料体系は、シンプルで、分かりやすくて、ドライバーが自分で検証できるほど明確であることが最低条件です。

そこで、給料体系を選択します。

1.究極の二者択一とは

給料体系見直しの前提条件
・賃下げを目的としない ⇒ 不利益変更ではない
・合法的な給料体系 ⇒ 最低賃金、割増賃金を順守
・わかりやすく ⇒ 複雑にしない
・納得性が高い ⇒ 従業員が自分で検証できる

 

(A)時間型(時間給・日給)

 

(特徴)
●シンプルでわかりやすい

●検証可能
労働時間や労働日数に所定の賃金を掛ければ給与が計算できる

●損得がない
月給では、月毎の暦日数が違うと法定労働日数や所定労働日数、法定労働日数や法定労働時間が違うので平均賃金や残業代の計算で損得があると言われ、平均所定労働時間で計算すると説明しても理解してもらえない。それならばと、時給や日給をご案内したら納得した。

(問題)
●非正規ではないか? ⇒ 非正規ではない
非正規雇用とは、一般的に次の3つのうちのどれかに該当する雇用のことをいいます。
・雇用期間の定めがある・・・契約社員
・通常の正規雇用者よりも労働時間が短い・・・パートタイム労働者
・直接雇用でない・・・派遣社員

なので時間給や日給の人は非正規ではありません。
実際、建設やドライバーでは時間給や日給で働いている人は多くいます。

 

●不安定? ⇒ 一定の保障をする
例えば、月の所定労働日数(時間)の9割以上出勤したら、その月は20日または160時間(20日×8時間)の基本給は保障するとします。
8月を例にとると、所定労働日数が18日(所定労働時間が144時間)だとして、18日×90%=16.2日(18日×8時間=144時間)出勤すれば20日(20日×8時間=160時間)の給料を保障することです。時給や日給ではあるが実質的には月給です。
これであれば所定労働日数(労働時間)が少ない2月、8月でも一定額の給料は保障されます。

 

●給料が安い? ⇒ 時給単価の水準を調整すれば安い給料にはなりません。

(B)歩合給

(特徴)
●モティベーションアップ

●会社への貢献度合いがわかりやすい

●割増賃金(残業代)の抑制

 

(問題)
●仕事を選ぶ? ⇒ 配車拒否を注意指導、歩合率の調整

●配車係の権限が大きくなる? ⇒ 配車係を経営者の身内で固める

●給料が不安定? ⇒ 一定の保障をする

 

【まとめ】

特徴 問題
時間型 シンプルでわかりすい

検証可能

損得がない

非正規ではないか?

不安定?

給料が安い?

歩合型 モティベーションアップ

会社への貢献度合いがわかりやすい

割増賃金(残業代)の抑制

仕事を選ぶ

配車係の権限が大きくなる

給料が不安定

 

※時間型と歩合給の併用型は、残業代の計算が煩雑なのでおススメしません。
なぜなら、時間型と歩合型のそれぞれで60時間以下と60時間超えを計算します。さらに深夜割増も休日割増も同様に時間の分と歩合の分とをそれぞれ計算しなければならないからです。詳しくは後述します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.時間型と歩合型の割増賃金の違い

(例)2023年4月、1か月間の基本給が月給で300,000円(残業代除く)、その月の総労働時間が240時間(所定労働時間160時間、残業時間が80時間)の場合の残業代計算(深夜割増と法定休日割増を除く)

 

【割増賃金(残業代)の計算における大きな違い】

時間単価  割増率
時間型 固定的な賃金÷所定労働時間数 1.25
歩合型 その月の歩合給÷総労働時間数 0.25

 

 

※時間型と歩合給の併用型をおススメしない理由は、残業代の計算が煩雑になるからです。
なぜなら、時間型と歩合型のそれぞれで60時間以下と60時間超えを計算します。

例えば、2023年7月、1か月間の基本給が月給で250,000円、歩合給が50,000円、その月の総労働時間が240時間(所定労働時間160時間、残業時間が80時間)の場合の残業代計算(深夜割増と法定休日割増を除く)

時間型の残業代
60時間まで=(250,000÷160)× 1.25 × 60 = 117,188円(A)
60時間超え=(250,000÷160)× 1.5   × 20 =   46,875円(B)

歩合型の残業代
60時間まで=(50,000÷240)× 0.25 × 60 = 3,125円(C)
60時間超え=(50,000÷240)× 0.5   × 20 = 2,084円(D)

合計=(A)117,188+(B)46,875+(C)3,125+(D)2,084=169,272円

さらに深夜割増や休日割増があれば同様に、時間型と歩合型とをそれぞれ計算が必要。

 

3.究極の二者択一の選択基準

時給・日給、歩合給の選択基準
次のことが全てできれば歩合給、(総合的に)できなければ時間型

◎ 歩合の根拠となる基準(売上等)を教えられる

〇 配車係に(ある程度)権限移譲できる

〇 取引先や取扱い荷物の(ある程度の)バランスが取れる

 

4.給料体系変更の手順

給料体系変更の手順

(1)現状認識・・・現在の拘束時間、労働時間、残業時間、給料支払い状況等を確認

(2)給料体系の選択

(3)基本給、諸手当の見直し

(4)試算、再試算

(5)賃金規程の作成

(6)従業員説明会

(7)賃金規程の届出、周知

 

5.従業員説明会の実施

就業規則、賃金規程の改定時に従業員説明会を実施する
内容
・目的
・変更内容(現行との違い)
・施行日

 

 

歩合でも時間型でも、拘束時間・労働時間の集計管理は必須!

 

給料体系を変更したら

「会社を守る4つの盾」をご参照ください。